秋の夜長
2009年10月26日
今週は薄暗い亭内で、和蝋燭のほの灯りと秋の夜長をお楽しみ頂けたらと思います。
旧暦八月十五夜の名月に対して、九月十三夜(新暦の今年は十月三十日)の月を
「後の月」と申しますが、また十五夜を芋名月と云うのに対して、十三夜を栗名月と
か豆名月と云い、栗や大豆を供えて祭ります。十三夜の月は、秋の夜長に しみじみ
とした情味を感じます。
今週の初の膳/酒の肴膳は、「秋の夜長」をテーマとして
鴨の砧巻き、 むかごとしめじの柚子味噌
五平もち、むらさき秋大根、秋小鰺の酢漬
十三夜汁、お口すすぎは、かぼす でございます。
昔の秋の夜なべ仕事に砧(きぬた)打ちと申して洗濯物の糊を柔らげたり、藁を慣ら
す為に盤上に乗せて木槌で打つのですが、秋の夜長に秋風や秋の寂しさの中で聞く
砧を打つ音色は、物悲しげな哀調がございましたそうで現在ではほとんど聞かれませ
んが、わら砧は今でも農家で行われてる所もあるようです。
さても深まりゆく秋の夜長に和蝋燭のほの明かりでしみじみと酌み交す酒には豊富に
出回る秋の実りが、より一層興趣を添えてくれることでございましょう。
さて来週は今年最後の花歳時記「紅葉狩り」でございます。亭内天井までの紅葉木を
配し、ひと足早い「紅葉狩り」をお楽しみ頂きます。
秋祭り
2009年10月19日
秋祭りの頃の昔なつかし伝統料理「あずま」
俗説にこの月、諸国の神々が出雲大社に集まるからとて十月を神無月と云い
年に一度のこの集まりで一年分の縁結びの相談を済ませてしまいます。
そういう伝説にあやかってか、この月から来月にかけては婚礼が多く
又、稲の収穫の終わったこの頃は、あちらこちらで秋祭りが行われます。
春祭りで豊作を祈ったのに対し、秋祭りは穀物の実りに感謝し、神にも供えて
共に喜ぶものでございます。縁結びも穀物の実りも、共に喜ぶ気持は ひとつで
ございましょうね。
今週の初の膳/酒の肴膳は、「秋祭り」をテーマとして
秋鯖祭りあずま、舞茸と菊花の胡麻味噌和え
祭り煮しめ、大和芋蒸し、たこ塩辛青柚子おろし
だまっこ汁、 お口すすぎは、松の実 でございます。
さて秋祭りの頃になれば、瀬戸内海沿岸の広島県中央から西部にかけて秋祭りや
正月に酒の肴やおかずとして来客に振る舞まわれる料理に、このしろ&さばを
使っての「あずま」と云う伝統料理がございます。
このしろ等の小魚を背割りにして中骨を取り全体に塩をふって半日位置き表面を
さっと洗って二杯酢に二日位浸しておき、その浸け酢で味付けしたおからに、
おのみ(麻の実)などを加え、魚の腹に詰めたものを「あずま」と云います。
最近では、あまり見かけられない料理「あずま」は、子供の頃は食べるのが嫌で
したが、酒の味が分かるこの歳になれば、何とのう懐かしゅう味わい深くあります。
今週の初の膳のひとつに、この伝統料理「秋鯖祭りあずま」を楽しんでつかあさい。
実り
2009年10月13日
古い言葉ながら,「天高く馬肥ゆる秋」の好季節は、海山里川のさまざまな恵みは
枚挙にいとまなく、まさに実りの秋と申せましょう。
今週の初の膳/酒の肴膳は、「実り」をテーマとして
烏賊の新米印篭蒸し、里芋もろこし実り和え
秋鮭黄金焼き、いり新銀杏、じゃが芋山椒酢
粟麩かぼす汁、お口すすぎは、焼き米 でございます。
秋に実を結ぶ木々の果実も限りなく、この頃は稲刈りの季節でございます。
早い所では八月下旬、遅い所では十一月下旬には刈られてしまいますが、稲刈りが
終わった後の田や畦道に落ちている稲穂は農家では一粒と云えども大事な米で、
落穂拾いは結構大切な仕事でありました。昔は老人や子女が腰をかがめて落穂を
拾い集めるさまを見かけられましたが、ともすれば稲作をも軽視する近来、日本の
農政のもとでは、うち捨てられたままの落穂を見かけることも まれではなくなりました
ようです。
名残り
2009年10月05日
秋風が吹く頃ともなれば、香魚とも呼ばれる鮎は産卵のために清流を下り
短い一生を終える子持ち鮎を「落鮎」とも云います。
その子持ち鮎を丸ごと焼いてほうばる!これぞ実りの秋の醍醐味とも
申せますが、その鮎を素焼きし、番茶で下炊き、更には朴葉の香りを添えた
合わせ出しでコトコト弱火で炊く事5時間・・・・・煮浸たしに致しました。
何処が身やら黄金色の はち切れんばかりの卵をのぞかせる子沢山で
突き出した腹から卵がのぞく様子は、いかにも食欲をそそります。
口の中ではじけるような独特の食感は、九月下旬から十月いっぱいの
そのわずかな期間だけ。夏の鮎とはまた違う美味しさの「名残りの季節」を
代表する川魚です。
また昔は十月の茄子を「名残り茄子」又は残り茄子を木に付けたまま売りに
来たので「木なり茄子」とも申します。秋が深まるにつれ肌理がこまかくなり
甘味を含んだ茄子は美味しゅうございます。
今週の初の膳 酒の肴膳は、「名残り」をテーマとして
落ち鮎朴葉煮、梨と水前寺海苔の白和え
走り蕎麦がきとろろ、菱の実、たたき酢牛蒡
名残り焼茄子ずんだ汁、 お口すすぎは、青紫蘇です
古語辞典によりますと「名残」とは「波残ナミノコリ」の約であるといいます。
波の引いた後に、なお残る物そこから転じて、あることの過ぎ去った後まで
尾を引く物事や感情の意です。
暦の上では来月で秋も逝きますが、夏秋の天地の恵みを感謝しつつ、
この季節ならではの自然の真味を心静かに味わうべき秋だとは存じますが、
「不時不食/時ナラザレバ食ワズ」この言葉の意味を私達は、改めて考えて
みる必要があるようでございます






